ドレミの歌の音階に隠された秘密!日英歌詞の違いと音楽理論の深層
世代を超えて歌い継がれる名曲『ドレミの歌』。学校の音楽室やテレビ番組で誰もが一度は口ずさんだ経験を持つこの旋律には、実は音楽理論や言語表現の観点から見ても極めて奥深い「音階の仕掛け」が組み込まれています。「ドはドーナツのド」という親しみやすいフレーズで知られる日本語詞ですが、ミュージカル原曲の英語歌詞と対比させると、単なる言葉遊びにとどまらない劇的なアプローチの違いが浮かび上がってきます。
音楽教育の現場で長年議論が続く「移動ド」と「固定ド」の対立、さらには作詞を手掛けたペギー葉山氏が遺した制作秘話まで、旋律の裏側に潜む構造を解明します。私たちが普段何気なく歌っている音階のルールには、どのような歴史と意図が込められているのでしょうか。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:日本語版は「身近な名詞・掛け声」を割り当て、英語版は「同音異義語のストーリー(Doe, Ray, Me...)」で音階を教える設計思想の違いがある。
- 要点2:音楽理論上、曲は基本的にハ長調(Cメジャー)を軸に構成され、音階(階名)と絶対的な音の高さ(音名)を直感的に結びつける教育的役割を果たしている。
- 要点3:訳詞者・ペギー葉山氏の手記にある「ファ」の誕生秘話や、移動ド・固定ド論争の視点を知ることで、楽曲の真の音楽的価値が立体的に理解できる。
【徹底比較】日本語詞と英語原曲における音階・言葉の決定的な違い

『ドレミの歌(原題:Do-Re-Mi)』は、1959年にブロードウェイで初演され、1965年に映画化されて世界的メガヒットを記録したミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌です。作詞オスカー・ハマースタイン2世、作曲リチャード・ロジャースの名コンビによって生み出されました。
原曲と日本語版の最大の違いは、「各音階の音をどう言葉に落とし込んだか」というアプローチにあります。英語原曲では、イタリア起源のソルフェージュ音名(Do, Re, Mi, Fa, Sol, La, Ti)と、まったく同じ発音を持つ英単語(同音異義語)を巧みに掛けて、子どもたちが歌いながら自然に情景を思い浮かべられるストーリー仕立てになっています。
| 音階(階名) | 英語原曲のフレーズと意味 | 日本語歌詞(ペギー葉山) | 編集部の構造分析 |
|---|---|---|---|
| Do(ド) | Doe: a deer, a female deer (メスの鹿) | ドーナツのド | 英語は単語の完全一致。日本語は子どもの大好物である食べ物を配置。 |
| Re(レ) | Ray: a drop of golden sun (一筋の金色の太陽光線) | レモンのレ | 英語は光の描写。日本語は黄色く瑞々しい果物で色彩イメージを継承。 |
| Mi(ミ) | Me: a name I call myself (私自身を呼ぶ名前) | みんなのミ | 英語の「私(Me)」に対し、日本語は連帯を示す「みんな」へと視点を拡張。 |
| Fa(ファ) | Far: a long, long way to run (遠く、走っていく遥かな道のり) | ファイトのファ | 英語は「遠い(Far)」。日本語は名詞が見つからず応援の掛け声を採用。 |
| Sol(ソ) | Sew: a needle pulling thread (針に糸を通すお裁縫) | 青い空(あおいそら)のソ | 英語は「縫う(Sew)」。日本語は頭文字ルールを崩し語尾の「そ」に着目。 |
| La(ラ) | La: a note to follow Sew (ソの次に続く音符) | ラッパのラ | 英語は「言葉が見当たらないので音符そのもの」。日本語は楽器を想起。 |
| Ti/Si(シ) | Tea: a drink with jam and bread (ジャムとパンと一緒に飲むお茶) | 幸せ(しあわせ)のシ | 英語は「お茶(Tea)」で冒頭の「パン(Doe)」へ回帰。日本語は幸福感で完結。 |
表から分かる通り、英語歌詞は「Doe(牝鹿)」から始まり、最後の「Tea(紅茶)」で「ジャムとパンを添えて飲むお茶」と歌われ、再びパン生地の「Dough(=Doe)」を連想させて最初のドへ戻るという、極めて精巧な円環構造を持っています。

音楽の授業では教わらない?ドレミの歌に隠された誕生秘話と歴史

日本においてこの曲を国民的唱歌へと押し上げた立役者は、歌手のペギー葉山氏です。1960年代初頭、本場ロサンゼルスでミュージカルを観劇した彼女は、その教育的価値と旋律の美しさに深い感銘を受け、自ら訳詞を手掛けることを決意しました。
しかし、日本語への翻案作業は困難を極めました。当時の手記や回顧録によると、日本語には「ファ」で始まる日常的な単語が極端に少なく、作詞作業は数週間にわたって完全にストップしたと記されています。「ファンタジー」「ファッション」などの外来語は当時の子どもたちには馴染みが薄く、どう表現すべきか頭を抱えていたといいます。
そんな折、立ち寄った喫茶店で劇団の仲間たちが「ファイトで行こう!」と声を掛け合っていた姿を目撃し、「これだ!頑張る気持ちを込めた『ファイト』にしよう」と閃いたエピソードは広く知られています。また、「ソ」についても頭文字の単語ではなく「あおいそらのソ」と助詞を挟むことで、子どもが歌いやすく情景が浮かぶフレーズを生み出しました。1962年にNHK『みんなのうた』で放送されると、瞬く間に全国の小学校へと普及していきました。
「音名」と「階名」の根本的ギャップ|移動ドと固定ドで読み解く音楽理論

音楽理論の視点から『ドレミの歌』を分析すると、日本人の多くが無意識に混同している「音名」と「階名」の複雑な関係性が浮き彫りになります。
基礎知識として整理しておきましょう。
- 音名(絶対的な音の高さ):調性に関係なく決まっている音の住所。日本語では「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」、英語や国際表記では「C・D・E・F・G・A・B」。
- 階名(相対的な音の役割):調(キー)の主音を基準とした相対的な音の位置。「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」。
『ドレミの歌』は調号にシャープもフラットも付かないハ長調(Cメジャー)を基本として書かれているため、「C=ド」「D=レ」「E=ミ」という具合に、音名と階名が完全に一致します。そのため、初心者がピアノ楽譜を読み解く際の最初の教材として極めて優れています。
しかし、ここで発生するのが「移動ドと固定ド」の論争です。
日本の一般的な学校教育現場では、ト長調(Gメジャー)になってもソの音を「ド」と歌わせる「移動ド唱法」がソルフェージュ指導の中心でした。一方で、幼少期からピアノ教室などで絶対音感を育てるクラシック教育では、どんな調であってもCの音を「ド」と呼ぶ「固定ド唱法」が主流です。
『ドレミの歌』をハ長調以外の調(例えばヘ長調やト長調)に移調して演奏した際、英語原曲の精神である「主音=Do」とする移動ドの感覚がないと、歌詞の「ド」と実際の響きの関係が崩壊してしまうという構造的パラドックスを孕んでいるのです。

【実態検証】ピアノ楽譜とコード進行から紐解くメロディ設計の妙
なぜ『ドレミの歌』は、音楽初心者の耳にこれほどまでに定着しやすいのでしょうか。その秘密は、計算し尽くされたコード進行と旋律線の跳躍にあります。
楽曲の冒頭では、各フレーズの頭にその音階そのものの音が配置されています。例えば「ド」のフレーズではルート音であるC音から始まり、分散和音(アルペジオ)を描きながら安定したトニック(I)の和音(Cメジャー)を響かせます。続く「レ」ではドミナント(V)であるG7コードへ向かう推進力を生み出します。
子どもが音階の覚え方を体得するプロセスにおいて、「音の階段を一段ずつ上がる感覚(順次進行)」と「和音の構成音を跳躍する感覚(跳躍進行)」の両方が1曲の中に完璧なバランスで配置されているのです。ピアノの鍵盤を白鍵の「ド」から順に弾くだけで旋律が立ち現れる直感的な設計こそが、半世紀以上色褪せない理由です。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネット上の音楽フォーラムやSNSにおいて、『ドレミの歌』に関してはいくつかの誤解が散見されます。ここで事実関係を整理しておきましょう。
第一の誤解は、「ドレミファソラシドという音階名は英語圏で生まれた」という思い込みです。実際には11世紀のイタリアの修道士グイード・ダレッツォが、聖ヨハネ賛歌の各節の頭文字(Ut-Re-Mi-Fa-Sol-La)を取って考案したラテン語由来のシステムです。英語圏では「Ut」が歌いやすい「Do」に変わり、7番目の音として「Ti(シ)」が追加されました。
第二の盲点は、「日本語版の歌詞は直訳である」という誤認です。前述の通り、英語原曲とペギー葉山氏による日本語歌詞は、音の並びこそ同じですが、込められた情景やメッセージは完全なオリジナル創作に近い翻案です。英語の「Far(遠い)」を「ファイト」に、「Sew(縫う)」を「青い空」へと転換させたローカライズの巧みさこそが、日本における定着の決定打となりました。
【プロの結論】音楽教育・ソルフェージュ学習における向き不向きの判断基準
『ドレミの歌』を活用した音階学習は非常に効果的ですが、学習者の目的やフェーズによって最適なアプローチは異なります。
【向いている人・おすすめのケース】
- 未就学児〜小学生の音楽導入:歌う楽しさと同時に「音の高低差」「長音階の響き」を身体感覚として身につけたい層。
- ポピュラー音楽・ジャズ・作曲を目指す人:調が変わっても度数(ディグリー)で音を把握する「移動ド的感覚」を鍛えたい学習者。
【慎重になるべき人・注意が必要なケース】
- クラシックの専門教育(ピアノ・弦楽器専攻):絶対的な音程の認識(固定ド)が求められる環境では、歌詞の「ドレミ」が特定の調に縛られることで混乱を招くリスクがあるため、音名(C-D-E)での読譜トレーニングを並行して行う必要があります。

【ドレミの歌 音階】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:『ドレミの歌』はハ長調以外のキーで歌ってはいけないのですか?
A1:いいえ、移調して歌っても全く問題ありません。劇中歌としても歌手の声域に合わせて変ホ長調(E♭メジャー)やヘ長調(Fメジャー)で演奏されるケースが多々あります。ただし移動ド唱法として捉えるか、固定ドの音名として捉えるかによって指導方法が異なります。
Q2:英語歌詞の「Ti(ティ)」はなぜ日本語で「シ」になったのですか?
A2:イタリアやフランスなどのクラシック伝統国では第7音を「Si(スィ/シ)」と呼びます。19世紀の明治期に日本の学校教育へ西洋音楽が導入された際、このラテン系ソルフェージュが採用されたため、日本では「シ」が定着しています。英語圏では「Sol」と頭文字が被るのを避けるために「Ti」に改変されました。
Q3:ピアノ初心者にとって最も効率的な『ドレミの歌』の練習法は何ですか?
A3:まずは右手だけで白鍵の「ド(C4)」から「高いド(C5)」までの親指から小指への指くぐり(指使い)を意識して単音で弾く練習から始めましょう。メロディの音階の動きが鍵盤の位置関係と完全に連動しているため、読譜の基礎固めに最適です。
まとめ:音階のルールを知れば音楽の楽しみ方が劇的に変わる
『ドレミの歌』は、単なる子どものための教育ソングではありません。そこには、音名と階名の関係性、言語ごとの音韻の響かせ方、そして学習者の好奇心を引き出すための緻密な音楽的工夫が凝縮されています。
日米の歌詞の違いや背後にある音楽理論を知ることで、慣れ親しんだメロディがまったく新しい表情を見せてくれます。ピアノや歌のレッスンはもちろん、音楽を聴く際にも、その旋律が描く「音階のグラデーション」に耳を澄ませてみてください。 (出典: ドレミ の 歌 音階(Yahoo!ニュース))